没入型歩行リハビリテーションシステム

 

1. 背景

ü  医学の進歩による脳卒中等の救命率の上昇

ü  入院期間短縮

ü  理学療法士の慢性的な不足

これらの要因によって、現在の歩行リハビリテーションでは、まだ良くなる可能性があるにもかかわらず最低限の機能回復で退院し、維持期リハビリテーションを行う患者さんが増えています。数年たつと機能回復曲線が横ばいになるプラトーと呼ばれる状態になります。これに対して十分な訓練量を確保するために、スポーツジム等で使われているトレッドミルやトレッドミルの上でロボットにより足の各関節を動かして訓練するLokomatなどが使われはじめています。しかし、適切な身体拘束が実現されていなかったり、着脱の問題やコスト、同じ場所で繰り返し運動をすることによるやる気の低下が問題となっています。

 

2. 目的

本研究では、バーチャルリアリティの分野で開発が進んでいる、歩行感覚呈示装置と没入型ディスプレイを組み合わせた新しい歩行リハビリテーションシステムの開発を行っています。

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図1 没入型歩行リハビリテーションシステムのイラスト

 

1. プロトタイプシステム

 

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図2 プロトタイプシステム全景

   歩行感覚呈示装置

       患者に合わせた任意の足の軌跡を呈示。足のみを機構に固定することで、適度な拘束と、容易な着脱を実現。

 

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【スペック】

     体重80kgまで

     歩幅80cm

     歩行速度100cm/

【ねらい】

     繰り返し運動刺激による神経回路回復/構築

     腰の回旋動作教示

   球面没入ディスプレイ

    ユーザの周囲に映像呈示。観光地や自宅近所の映像と歩行動作を同期させることで、単調さを少なくし、やる気を持続

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【仕様】

      視野角水平270

      垂直60

【ねらい】

      視野をほとんど覆おう実写映像呈示

    没入感によるイメージ増強

    モチベーション活性化

 

 

図3 全周囲映像取得システム

左図のシステムで球面没入ディスプレイに投影する映像を取得します。

移動台車の上に全周撮影カメラを載せて無線LANでリアルタイムに操縦、映像取得が可能です。

Ladybug2によるより高精細な全周映像を録画することもできます。

 

 

2. 訓練方法

歩行訓練は、あらかじめ計測しておいた健常者の足の軌跡データを繰り返し再生します(受動歩行)。患者さんの体格、その日の体調に合わせて、歩幅や歩行周期を調整します。

このほかに、圧力センサによって重心移動を計測し、軌跡再生のタイミングを替えるモードや、足の位置をセンシングして歩行する能動歩行モードがあります。

 

3. 評価実験

歩行訓練の効果

このグラフは脳出血による片麻痺患者さんの3ヶ月間10m歩行による歩行速度の変化の例です。Bの期間だけ訓練を行い、A,A’の期間は通常のリハビリテーションメニューでの訓練をしていました。それまで横ばいだった歩行速度が向上していることが分かります。

複数の患者さんに試していただき、程度の差はありますが、何らかの変化が観察されました。また、特に訓練を中止するような副作用は観察されませんでした。

 

 

問い合わせ先: 矢野博明 

本研究は 筑波記念病院、オリンパスの協力を得て進めています。平成17-20年にNEDO産業技術研究助成事業の支援を受けました。